ツカノマ・サマー
私は黙って俯いた。
真夏くんが私を背中に隠すように立つ。
「……やっぱり、高野 すみれですよね? やっばー!! あの情報、本当ってことなんだ!?」
と、背の高い女性が嬉しそうに笑って、私にスマートフォンを向けた。
(……情報?)
「あの、やめてください」
真夏くんが私の手を取り、その場を離れようとする。
「えっ? ってか、お兄さんは何!? 高野 すみれの何なわけ!? あの情報の『男性』ってお兄さん!?」
と、デニム色のTシャツを着た男性がはしゃぐ。
「あの」
と、私は背の高い女性に声をかけた。
女性はスマートフォンの画面から、私に視線を移す。
「あの、情報って何ですか?」
「SNSで拡散されているやつですよぉ。見てないんですか? ……ほら、コレ!」
女性がスマートフォンを操作して、私に見せてくれる。
そこには。
【高野 すみれ、男性の部屋に雲隠れ。推す価値すでに無し】
と、書かれていて、ご丁寧にこの町だとすぐわかるように、さっきの商店街の風景写真が一緒にアップされている。