ツカノマ・サマー

「……やだ」
と言った私の顔をのぞきこみ、
「やだ?」
真夏くんが困ったような顔をした。



「やだ。真夏くんに、弱い子だって思われたくない」

「なんで?」

「嫌われるの、怖いから……」



声が小さくなった。

私は恥ずかしくて、真夏くんの腕の中でうつむく。



真夏くんは、
「嫌わないよ」
と、私の頭を撫でた。



「どうして嫌いになるって思うんだよ。オレがすみれちゃんのこと、嫌いになると思う?」

「……わかんないじゃん」

「なんで?」



私は真夏くんの目を見た。

キレイな黒い瞳に、私がうつる。



(そんなのわかんないよ、真夏くん)



これから先。

私の仕事の関係で。

真夏くん以外の人に、こんなふうにハグされることだってきっとある。

キスシーンだって、実際に撮るんだから。



そういうの観て。

真夏くん、私のことをどんなふうに見るの?
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