ツカノマ・サマー

真夏くんのメガネが、私の肩にかすかに当たった。



鼓動が速くなる。

この速いリズムは。

私の心臓?

それとも……?



(どっちでもいいか)



戸惑いや驚きよりも、真夏くんが愛おしい気持ちが大きい。

だから私はそっと、真夏くんの背中に腕を回した。



しばらくの間、ぎゅっとしていたけれど。



「あ、見て」
と、真夏くんが窓の外を指差した。



「何?」

「ほら、夕日。キレイだよ」



本当は名残惜しかったけれど、真夏くんの体から離れる。

窓のそばに行って、ふたりで空を見上げた。




「本当だ、真っ赤な空……」



ちらっと隣を見ると、真夏くんが優しい顔で夕焼け空を見ている。



真夏くんが、
「見て、カラスが飛んでる」
と、私に視線を移した。



その時。

視線が絡んでいるみたいに。

真夏くんの瞳から、目を離せなくなった。



(……キスしてくれたなら、いいのに)
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