ツカノマ・サマー

「うん。まだ入学して四か月くらいの、一年生だけどね」

「何の勉強をしているの?」

「植物について。農学部に進んだんだ」

「えっ! すごいじゃん! ずっと草花が好きだったんもんね!?」



真夏くんは嬉しそうに、「すごくはないよ」と言いつつ照れている。



真夏くんは小さな頃から植物が大好きで、よく花や草の名前を教えてくれた。

何度も同じ植物の名前を聞いても、ちっとも嫌な顔をせずに教えてくれる。

でも私は、実はあまり植物に興味はなかった。

だから、名前を覚えられなかった。

それでも何度も名前を尋ねたのは、真夏くんと話したかったからだった。



「すみれちゃんは?」

「え?」

「毎日、どうしてたの?」

「私?」



私は一応、芸能クラスのある高校に進学したものの、ほとんど登校していない。

この春に入学したてでこんなことを言うのはおかしいけれど、卒業出来るのか、今のままの状態で仕事があると怪しい。
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