ツカノマ・サマー
このまま。
夕日に見られていてもいいから。
真夏くんとキスしたい。
「すみれちゃん」
真夏くんが真剣な声で私を呼ぶ。
ドキドキと、心臓は高鳴ったまま。
伸びてきた手で、髪の毛を撫でられて。
ときめいた心がふわふわしていて、現実感がない。
真夏くんが、ふいに視線を外した。
(えっ?)
「……ごはん、食べよ?」
「えっ?」
「コロッケ。あっためて食べようよ」
真夏くんは私から離れて、キッチンに立つ。
残念な気持ちで、真夏くんの背中を見ていた。
ゴロポテコロッケはひとつずつ、カニクリームコロッケとカレーコロッケは半分ずつに分けて、真夏くんと「美味しい」を何度も言い合って食べた。
「また食べたい」
と本心から言うと、
「またおいでよ。一緒に食べよう」
と、真夏くんが笑った。
不安な気持ちが少しずつ、体から離れていってくれた感覚がして、だいぶ楽になってきた。