ツカノマ・サマー

「えっ、いいの!?」

「甘えん坊モードだね」



(あれ?)



なんか、これって。

小さな子をあやすみたいな?

よーしよし、もう仕方ないなぁ、ぎゅってしてもいいよ、的な? 



(……なんか、悔しい)



やっぱり私ばっかりドキドキしている。



(一番悔しいって思うのは、それでも私が喜んでいることなんだよね)



「ドライヤー、してくる」

「うん」
と、真夏くんがドライヤーを渡してくれる。



洗面所で、ちょっとだけいつもより念入りに乾かした。

明日、髪の毛を見て笑われないように。



(……明日、もう帰らなくちゃ)







洗面所から出ると、真夏くんが布団を敷いていた。

やっぱりベッドから離れた位置に敷いているから、私は無言でベッドのそばに布団をずらした。



「すみれちゃん」
と、真夏くんが呼ぶ。



「見て、キレイな月が出てる」



真夏くんがいる窓のそばに、私も移動した。
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