ツカノマ・サマー
ときめきとはじめて
振られることを前提に告白するだなんて。
少女漫画でたまに見かけるけれど。
(こんなにつらい気持ちだったんだ)
大切な気持ちなのに。
私、これからその気持ちを傷つけちゃうんだ?
なんだか切ない。
「真夏くん」
「うん」
真夏くんも、私をまっすぐ見ている。
「何から話せばいいのか、ちょっと難しいんだけど」
と、前置きをして。
私は、
「今度の仕事でね、キスシーンがあるの」
と、切り出した。
「えっ……、すみれちゃんのキスシーン?」
「そう、私。……私、今度初めて会う役者さんと、きっとそう遠くない未来にキスする」
「……」
真夏くんの反応が、ちょっとショックを受けているように見えたけれど、きっと気のせいだと思う。
「わかる? 好きでもない人とキスするんだよ?」
「……そうなんだね」
「真夏くんは笑うかもだけど、私、今までの人生で誰ともキスをしたことなんてないの」