子犬系男子は待てを知らない
「璃子ちゃんは誰にでもこんなことするんだ?」
「えっと、それは……」
吐息のかかる距離で見つめられ、どうすることもできない。
「俺も男なんだけど。ちゃんとわかってる……?」
……っ、どうしよう。
あ、あたし──。
「ま、いーや。手当ありがとう璃子ちゃん」
「⋯⋯はい」
あたしが返答に困っている間にすくっと立ち上がった雪平くんは、それだけ言い残して保健室から出ていってしまった。
えっ。
えっ。
えっ。
怒らせた?
嫌われた……?
え……やだ。
っていうか、〝勘違い〟ってなに? なんなの!?
ボボボボッと爆発したあたしの頭は、すぐにプシューっと音を立ててしぼんでいった。
どうやら身体の力が全部抜けてしまったみたい。
あたしはそのまま暫くの間、椅子から立ち上がることができなかった。