子犬系男子は待てを知らない


「いちごみるくキャンディ……」


……あっ。

そっか。これだったんだ。


「意地悪言っちゃったけど、怒ってないから安心して?」

「っ!」


……うそ。あたしが気にしてたの、わかってたの?

動揺して言葉を探していると、ポンと頭に重みが加わった。


「ごめんね、困らせて。……でも、無防備すぎる璃子ちゃんがいけないんだよ?」

「っ、そ、それは……っ」

「……なんてね」


彼はそう言い残すと、そのまま男子の更衣場所へと走っていった。



……雪平、くん。

あたしはキャンディの乗った手のひらを、ギュッと握りしめる。


「璃子? 何突っ立ってんの?」

「ごめん、今行く」


あの香りの正体……わかっちゃった。


「なんか今日、やっぱり変じゃない?」

「そんなことないって」

「顔赤いし」

「えっ!? は、走ったからかなぁ……?」


そしてもう一つ。

あたしは大事なことに気づいてしまったんだ。

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