子犬系男子は待てを知らない
「雪平くんなんで? 部活でしょ」
「大丈夫。ちょっとなら間に合うから」
「えっ、あっ……」
というか!
「全部持たなくていいよ!」
驚いた。
あんなに重かった本を、ひょいと平気な顔して全部抱えてるんだもん。
「……んー、別にいいんだけど。どうしてもって言うなら……」
はい、と渡されたのは、たった1冊の本だった。
呆気に取られるあたしに、雪平くんはクスッと笑って言った。
「ほら、行くよ璃子ちゃん」
「……うん。ありがとう」
雪平くん、ほんとに優しい。
ついこの前ちゃんとわかったばかりだけど。
こういうところが、やっぱり──。
「好きなんだなぁ……」