子犬系男子は待てを知らない


というわけで、内緒事を心にしまったまま、あっという間に到着した校門前。


「あれ……?」


そこであたしは、すぐさまその異変に気づいた。

この前と比べたら少しマシだけど、それでも──。


デジャブ……?

と首を捻った時、人だかりの中にいたその人がぱっと表情を明るくした。


「藍原さんっ」

「桃園さん!」


ふわり、長い髪を揺らしながらあたしの元へ上品に駆けてきた桃園さんの周りには、可憐な花がいくつも咲いて見える。


また雪平くんに会いに来たんだろうけど。


「雪平くんなら部活だよ? 何時に終わるか……」

「ええ、わかってます」


……へ?

じゃあなんで。


「今日は藍原さんに会いに来たの」


ああ、藍原さんに……。

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