子犬系男子は待てを知らない


「好きなんでしょう? 諒のこと」


びくぅっ!


「やっぱりそっかぁ……」


なんで知ってるの!?

唇に指を当て斜め下を見る桃園さんを前に、顔がかぁぁと赤くなっていく。


「あの! やっぱり、桃園さんも……」


あたしが窺うように聞くと、彼女はにっこりと笑った。


「もちろん好きよ。だから……」


だから……?


「諒が今誰を好きでも、絶対に譲らないから」

「なっ!? あ、あたしだって!」


慌てて叫ぶように言うと、桃園さんは少し哀しそうな顔をした。


「ずっと捜してた。どこに引っ越したのかわからなくて、悲しくて、辛くて苦しくて……。やっと見つけたの」

「……っ」

「理由とかそんなの知らない。自分の気持ちを伝える勇気もない人には負けたくない」

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