子犬系男子は待てを知らない


「そう言えば明日の文化祭、美織ちゃん来るんだって」

「えっ!?」


サラリと告げられたそれに、あたしは握っていたお箸を落としそうになった。


……桃園さん、やっぱり来るんだ。


来そうだなーとは思ってたけど、いざ事実だと知ると、ちょっと気持ちが違うというか、身構えちゃうというか……。

さっきまでせっかく〝晴れみたいでよかった〜〟なんて喜んでいた気持ちが、しゅーんと半分くらいに萎んでしまう。


だってこの前、

『理由とかそんなの知らない。自分の気持ちを伝える勇気もない人には負けたくない』


そんなこと言ってきたわけだし。

桃園さんには、その勇気があるってことだし。


……この文化祭で、告白するってことも考えられるわけで。


「それでね、藍原さんによろしくだってさ」


……ん?!


「璃子ちゃんと会えるの楽しみにしてるみたい」



いやいや〝璃子ちゃんと〟って。

……ごめんそれ本気で言ってる?

違う違う。

会いたいのはあたしじゃない。100パーあなただから。


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