子犬系男子は待てを知らない


だってあたしには、どうしても今日、やり遂げなきゃならないことがあるから。

さっきから頭はそのことでいっぱいで、ついつい意識がそっちへ行っちゃうんだ。


緊張とわくわくとに占拠され、心が地についていないような不思議な感覚がしてる。


……でも。何がなんでも、やり遂げてみせる。

桃園さんが来るのは怖いけど、絶対絶対負けない。


そしたら存分に文化祭を満喫してやるんだ。


そうして、教室までたどり着いたあたしがそのドアを開けると──。



「きゃ〜〜〜〜」


悲鳴に似た歓声がこれでもかと湧き上がっていた。


──ドキッ。

探さずともわかったその原因。

みんなの熱い眼差しの先には、いつもと違う特別な衣装に身を包んだ──。

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