子犬系男子は待てを知らない


「お嬢様、そろそろお時間ですよ?」


え……っ?

愛花に真相を聞いてやろうとした矢先、横から現れたなにかによって視界を奪われたと思ったら。


「あ、旭! なによー、もうなりきってんの?」

「完璧っしょ? 俺の執事」

「……まあ」


衣装を見せびらかしながらニヤッと笑う姿は、誰がどう見ても様になっている。

悔しいけどこいつ、顔はいーもんね。


「きゃーーっ、旭くんかっこい〜」


なんて声もちらほら聞こえてくるし。


「相変わらずモテモテですねー、旭くん?」

「まーね。俺イケメンだし」

「……わ、そこ謙遜しないんだ」


ちょっと嫌味を言ってやったつもりだったのに。

ふざけてるのか本気なのか、自信たっぷりに放たれたそれにフッと笑ってしまった。


そんな最中。


「……ま、色んなやつにモテても意味ねーんだけどな」

「え?」

「ん?」


ぽつりと落とされたそれに、あたしはぱちぱちと大きく瞬きをした。


……え。もしかして旭──。


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