子犬系男子は待てを知らない
「好きな人いたの?」
「は? ばーか。例えばの話だよ」
「いたっ!」
デコピンをかまされ、とっさにおでこを押える。
「つーか、もし仮にいたら悪いっての?」
「……べ、別にそういうわけじゃ……」
なによ旭ったら。
ただ、そういうの聞いたことないから、びっくりしただけなんだけど……。
「まあいーや。おいみんなー、開店まであと20分だから! 準備急いでな」
うぐっと顔をしかめて見ていると、切り替えるように呟いた旭が教室を見回しながら大きく声を飛ばした。
さっすがリーダーシップ抜群の文化委員。
旭の一声で、みんなが一斉に動き出した。
「藍原も急げよ」
「うん」
そうだ。悠長に喋ってたけどあたし、最初のシフト当たってたんだった。
「愛花行こー」
あたしは気持ちを切り替え、愛花を誘って更衣室へ向かった。