子犬系男子は待てを知らない


──そうしていよいよスタートした文化祭。

あたしたち1年C組の執事喫茶も、万全の準備を整え開店した。

最初からお客さんは列を作るほど集まってくれて、嬉しい悲鳴が上がるくらいの大賑わい。


そんな中──。


「ねぇねぇ、名前教えてよー?」

「……」

「ねぇってばぁ〜」


うるさいなぁ。


調理スペース前。

メイド服に身を包んだあたしは、喉まで出かかったこの言葉を必死に押し殺していた。


かれこれ2~3分は話しかけてきているこの二人組の男たちは、

見たことない制服着てるから、きっと他校の生徒だと思う。


早く諦めてくれないかな……。

苦笑いを浮かべ、それとなくアピールしてみるけど、中々思うようにはいかないらしい。


「おい、聞いてんだろ?」


次第にその口調は強くなり。


「おい、お客様を無視すんのか!」

「あのっ──」


〝困ります〟

そう、言いかけた時だった。

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