子犬系男子は待てを知らない
「うちのメイドに何か御用ですか?」
雪平くん……!
「用も何も、こいつが話しかけてんのに無視すっから」
「プライベートの詮索は当店では禁止されておりまして。何かお申し付けがありましたら、是非とも私にどうぞ」
すごい……。
庇うように目の前に現れた彼。
淡々と述べるその様子を、あたしはただ息を呑んで見守ってしまう。
「……それよりお坊ちゃま方、あちらの席でお茶でもいかがですか?」
「「……お坊ちゃまぁ!?」」
「ええ。お坊ちゃまですが、なにか?」
「え、いやそのっ」
何故か急にたどたどしくなる男たち。
瞬く間にその顔は真っ赤になっていき。
「やっ、い、いいよ」
「お、俺も。喉乾いてねーし」
目を見合わせたかと思えば。
「そーいや俺ら用事あったんだわ!」
「じゃーな!」
それだけ言い残して、逃げるようにバタバタと向こうへ走っていった。