子犬系男子は待てを知らない
「あっ! 雪平くん!」
「へ?」
土壇場で繰り出した奥の手。
思惑通り指さす方へ向いた桃園さんに今がチャンスだと見極め、一気に走り出した。
そして──。
「雪平くん!」
やっとの思いで目的地へ辿り着いたあたしは、乱れた呼吸のまま、中へ入るなり思いきり叫んだ。
「璃子ちゃん!」
やっと会えた……っ!
「……遅くなってごめんね。愛花は?」
「関口さんなら、用事があるって行っちゃった」
「え!?」
「ただ、誰か来るはずだからここで待っててって言われて」
……え。それでちゃんと今まで待っててくれたんだ。
雪平くんてほんと……。
いや、そんなことより今は……!
きゃーーーっ、もう56分になってるぅ!!
時計を確認すると同時に叫びそうになった。
やばい。急がないと。
「あのね、雪平くん」
あたしは慌てて雪平くんに近づいた。
「聞いてほしいことがあるの」