子犬系男子は待てを知らない


例のジンクス。


『文化祭当日、12時までに結ばれたカップルは一生幸せに添い遂げることができるんだって』


これが本当なら……。


──ドクン、ドクン。


「あたし、雪平くんのこと……」


心臓の音が大きく鳴り響くのを感じながら、まっすぐとその目を見つめる。


大丈夫、いける。

自分を奮い立たせたあたしはいよいよ、震える唇をそっと開いた。


「す──」

「りょおー? ねぇ諒どこーー?」

「「……っ!?」」


げーーっ。桃園美織ーーーーーっ!

せっかく撒いたと思ったのに!


「ん〜、この辺りで見たって聞いたのになぁ……」


危ない。

そう思ったあたしの身体は咄嗟に動いていた。

< 190 / 352 >

この作品をシェア

pagetop