子犬系男子は待てを知らない
それから暫く静寂の世界。
聞こえてないかな……?
桃園さんに見つからないかもそうだけど、ドクドクと主張する心音が雪平くんに届いていないか心配で、心が落ち着かない。
……ああ、心臓壊れちゃいそう。
考えれば考えるほどダメになるってわかるのに、
ダメって思えば思うほど考えてしまうのは何でだろう。
──どれくらい経っただろう、桃園さんの声と足音は小さくなっていった。
「さっきはごめん、わがまま言って」
誰もいなくなったことを確認してから、あたしは俯きながら、気持ち小さめの声でそう言った。
「ううん。まさか璃子ちゃんがあんなこと言うとは思わなかったけど」