子犬系男子は待てを知らない
「ちゃんと良い意味だよ」
「……そお?」
「うん。少なくとも、俺にとってはね」
それってどういう──。
「……俺が前に引っ越ししたって言ったこと、覚えてる?」
「え? うん」
もちろん、覚えてる。
あたしが雪平くんと桃園さんの関係が気になって、質問した時に教えてくれた……。
「あれさ、母さんの病気が理由なんだ」
「えっ」
そんな⋯⋯。
耳に届いたのは、思いもよらない言葉だった。
「去年の秋。前からあまり調子は良くなかったんだけど。ちゃんと診察してもらったら、専門の大きな病院に行くべきだって、お医者さんにそう言われて。そのまま、入院することになったんだ」
動揺して返す言葉も見つからず、固まってしまったあたし。
雪平くんはそんなあたしに、優しく語りかけるようにそう言った。
知らなかった。
まさか雪平くんのお母さんが⋯⋯。