子犬系男子は待てを知らない
頭が追いつかないけれど、それが本当だとしたら。
雪平くんは今までそれを一人で抱えていたってことなのかな。
いつも笑顔で。
そんな素振り、全く見せなかったのに。
「お母さん……大丈夫なの?」
「うん、なんとか。退院はまだできないけど、病状は今のところ安定してるって」
「そっか……」
あたしが悲しい顔をしていたからだろうか。
雪平くんはポンとあたしの頭に手を置いて、柔らかに微笑んだ。
「あの時……璃子ちゃんと初めて出会った時。母さんのお見舞いに行った帰りだったんだよ」
「っ!」
……そういうこと、か。
だから雪平くん、あんな顔してたんだ。
あの時あたしが感じた違和感も、山岡くんの気がかりも、お母さんのことがあったから⋯⋯。
「正直毎日毎日不安でさ。……でもそんな時に璃子ちゃんが現れた」
「……っ」