子犬系男子は待てを知らない
「人目も気にせず飛び出して、叫んで。知らない人のためにこんなに必死になれる人がいるんだって……。そう思ったら、いつの間にか明るい気持ちになれてたんだ」
ぽつり、ぽつりと、確かめるように言葉を紡いでいく雪平くん。
あたしは、静かに耳を澄ましながら熱くなった目頭を押さえた。
「あたし、ちょっとは雪平くんの役に、立てた⋯⋯の?」
勝手に勘違いして、飛び出して、絶対に迷惑だと思ってたのに。
「うん、璃子ちゃんにはすごく感謝してるんだよ? ……さすがに命を絶とうとは思ってなかったんだけどね」
「うっ、それは」
「⋯⋯でも。その時からいい子だなあ、面白い子だなって思ってて。⋯⋯そしたら同じ学校で、しかも同じクラスでびっくりしたけど。⋯⋯あの時と同じ一生懸命で他人思いな姿に、さらに惹かれていったんだ」
……そんなこと、初めて言われた。
いつもはお節介とか、猪突猛進すぎるとか、
いいことなんてちっとも言われないのに。
ずっと疑問だった。
なんであたしに懐いてくれてるんだろうって。
なんでこんなあたしを好きって言ってくれるんだろうって。
「璃子ちゃんは、俺の中にある常識みたいなものを壊してくれる……俺にとっての、光なんだ」
「っ!」
あたしは、柔らかなその瞳に、吸い込まれてしまいそうになった。
……そっか。
雪平くんはあたしを……いつもそうやって受け止めてくれてたんだね。