子犬系男子は待てを知らない


「いいこと聞いちゃった」

「へ!?」


愉しそうな企み顔がこちらを向く。

あたしは反射的にゴクリと喉を鳴らした。


「璃子ちゃんの初めて、全部俺がもらっちゃお」

「なっ」


なにそれぇ……っ!


いつも突拍子のないことを言う雪平くんだけど。

あたしが叫んでしまいそうになったのを抑え込めたのは、きっと奇跡だ。


……と言うか、もっ、もらうって何をですか?!


色々と想像して、勝手にドキドキしてしまう。

でも。


「だめ?」

「うっ」


そんな天使な顔されたら、


「だめ、じゃない」


そう、答えるしかないじゃない。


なのに雪平くんはというと、人の気も知らずに「わーい」と笑って見せた。

そんな姿にキュンとしてしまうんだから、あたしってば本当に単純なんだろうな。
< 208 / 352 >

この作品をシェア

pagetop