子犬系男子は待てを知らない


「んー、どこから行こっかなー?」


マップを手に入れたあたしたちは、すぐさま開いてにらめっこする。

ジェットコースターにゴーカート、観覧車にウォーターライド。

うわっ、どれも楽しそ〜。


「ねぇ、雪平くんはどれが好き?」

「俺はねー」


うんうん、と次の言葉に耳を澄ます。

次の瞬間、聞こえてきたフレーズに、あたしの身体は瞬時に反応した。


「お化け屋敷」


ドキンっ。


「お、お化け屋敷?」

「うん。璃子ちゃんはもしかして苦手、だったり?」

「やっ、そんなこと⋯⋯」


めちゃくちゃ大ありです⋯⋯!


お化けが怖いとかそんなんじゃなく、単純に昔から〝暗い所〟が苦手で。

寝る時は絶対明かりは消せないし、夜道はなるべく歩きたくない。

お化け屋敷には、小さい頃家族で行った時一回だけ入ったことあるけど、その時は見事ギャン泣き。

お父さんに抱えられてリタイアゾーンから出てきたことが、懐かしい。


でも。

それでも。


雪平くんが⋯⋯大好きな彼氏が、一番好きだって言ってるお化け屋敷。

あたしの都合で断るわけにはいかないでしょ。


⋯⋯ってなわけで。


「お、お化け屋敷、だーいすき!」


藍原璃子、腹を括ります!

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