子犬系男子は待てを知らない
「もー、やっぱり苦手だったじゃん」
「へへ」
お化け屋敷を出ると、案の定雪平くんに怒られてしまった。
あれだけ怖がってちゃそりゃバレるよね。
絶対にいけると思ってたのに、情けない限りだ。
「あたし、ほんとは暗い所が苦手で……」
まあ、オバケも怖かったけど。
「嘘ついてごめんなさい」
ベンチに座りながら、しゅんとする。
そんなあたしに、雪平くんはため息をついたかと思えば。
「別に怒ってるわけじゃないよ」
「えーでもさっき」
「俺の前では無理してほしくないってだけ」
そう言って、ポンと頭に乗せられた手。
向けられた、ちょっと困ったような優しい笑顔に、突として胸が騒ぎ出すのがわかった。
あたしはそれを隠すよう、目線を地面へ追いやる。
「雪平くんの行きたいところに行きたかったの」
「……うん。わかってる。そういうところが好きなんだもん」