子犬系男子は待てを知らない


「あ〜美味しかった」


アイスも食べ終わり、幸せ気分の頭はもう先へと向かう。


「次どうする?」

「そうねぇ……あ」


辺りを見渡すと、たまたま目に入った時計がもうすぐ12時だと教えてくれた。

楽しくて全然気づかなかったけど、もうそんな時間になってたのか。


「そろそろお昼にする?」


あたしはさっきアイスを食べたばかりで小腹は満たされてるけど、雪平くんはきっとお腹空かせてるはず。

それに……。


「そうしよっか」

「うん……」


頷いて、ちらりと鞄に視線をやる。

大きめの、お気に入りのボストンバッグだ。


「……璃子ちゃん?」

「あのっ」


──ダメだ。


あたしは、鞄に伸ばしかけた手をすぐに止めた。

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