子犬系男子は待てを知らない
……せっかく作ってきたのにな。
鞄の中には、今朝あたしが早起きした最もな理由である、お弁当が入っている。
雪平くんが好きそうな料理を詰めこんだ、手作りばかりの自信作。
唐揚げに卵焼き、ハンバーグ、ほかにも色々、数日前からメニューを考えて……。
今朝だって、雪平くん喜んでくれるかなぁとか、美味しいって言ってくれるかなって。
本気で楽しみにしてたはずなのに。
何でだろ。
あたしの喉は、それを伝えることを許してくれないんだ。
「なんでもない!」
こんなことなら、あのままリビングに忘れてきた方がよかったかも。
小さくため息をつきながらフード店を探す。
どこか美味しそうなところは……。
「あ、あそこのレストランとかどう? 人もまだ少なめだし入りやすそ──」
「璃子ちゃん」
……え?
「間違ってたらごめんなんだけど、お弁当作ってきてくれた?」
「なんで……」
「手荷物検査の時、たまたま見えちゃって。……あの、いつもお昼に使ってるお弁当入れ」