子犬系男子は待てを知らない
ドキッと心臓が音を立てて跳ねた。
雪平くんは、いつも意外なところで鋭い。
このままなかったことにしようって、そう思ったところだったのに。
「……えっと、うん。実は……」
図星を突かれたあたしは、悩みに悩んだ末、白状することにした。
見られてたんなら変に隠せないし。
渋々、半ばもう諦めみたいな感じで。
「あそこ、テーブル席空いてるみたい。行こっ」
「うん」
あたしが返事すると、雪平くんはあたしの手をひいて軽く走り出した。
そして、向かいの席に座ったあたしたち。
だったんだけど。
「……」
よくわからない緊張に襲われ、なかなか顔を上げることができない。
お弁当、本当に渡しちゃっていいのかな……?
なんて、ここまできておいてまだ弱気な自分が出てきて嫌になる。
「璃子ちゃん?」
「……あ、えーっと」
ひとまず覚悟を決めるしかない。
そう思ったあたしは、少し震える手で鞄の中からそれを取り出した。