子犬系男子は待てを知らない


「これ、雪平くんの分……」


おずおずと目の前に差し出してみる。


「ありがとう! 朝、作るの大変じゃなかった?」

「ううん。あたしが勝手に作りたくて作っただけだから」


そう。

ただ喜んでほしくて。

なにかしたくて、作ったお弁当。


「迷惑じゃ、なかった?」


そろりと問いかける。

すると雪平くんは一瞬驚いた顔をしてから、柔らかに表情を綻ばせた。


「……なんで? 好きな人が自分のために作ってくれたものだよ? 嬉しくないはずがないよ」

「……っ」


そんな顔が返ってくるなんて、思ってなかった。

全て包み込んでくれるような優しい笑顔に、喉の奥が苦しくなる。


こんなの困るって、いらないって、そう思われたらどうしようって。

いつの間にか、心のどこかで怖がってしまっていたから。

< 232 / 352 >

この作品をシェア

pagetop