子犬系男子は待てを知らない
「璃子ちゃんどうした?」
「……お弁当、重いかなって心配だったんだけど……あっ!」
やっばい、声に出しちゃった。
どうしよう。
変に思われたかな……?
「重い? たしかにずっしりしてるね、このお弁当箱」
え?
ずっしり?
「……ち、ちょっと違うけど」
「ん?」
お弁当を両手に掲げきょとんとする雪平くんの姿に、あたしは堪えきれずに吹き出してしまった。
いわゆる、拍子抜けっていうやつだ。
「えっ、俺変なこと言った?」
「ううん。そう。あたし、おかずたくさん作ってきたんだ」
「へえー! それは楽しみだ」
……やっぱり、あなたには適わない。
真っ黒な水が一気に浄化されるように、あたしの心配事なんて、全部全部なかったことにしてくれるんだもん。
ありがとう、
喜んでくれて。
ありがとう、
救ってくれて。
「作ってきてよかった……」