子犬系男子は待てを知らない


「ん、なんて?」

「あー……ほら、どうぞ。お口に合うかわかんないけど、食べてね?」


あたしが促すように言うと、雪平くんは「うん」と頷いた。


……ほんとバカだなぁ、あたし。

心配なんて、必要なかったのにね──……。



「わぁ! 俺の好きな物ばっかだ」

「え、ほんと? よかったあ」


パカッと蓋を開けるなり声をあげた雪平くん。

ちょっと緊張したけど、反応は結構上々?

ぱぁぁと煌めいたその表情を見て、自然と口角が上がってしまった。


まあ実はさり気なく好みをリサーチした……とは本人には言えないよね。

山岡くんを始め、その節はみんなありがとう。

なんて空に感謝を伝えていると、ついに本番がやってきた。


「いただきますっ」


ゴクリ。

お箸が伸ばされた瞬間、息を呑んで次の言葉を見守った。


「おいしい! やっぱり璃子ちゃんの料理は最高だね」

「……へへっ、やったぁ」


嬉しいけど、ちょっぴり照れちゃうなぁ。

こんなに喜んでくれるなんて……。


「あ、雪平くん」

「ん?」

「口にソースついてる」

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