子犬系男子は待てを知らない


***



──幸せな余韻に浸ったまま、名残惜しくももう帰る時間になってしまった。

遊園地を出たあたしたちは今、歩いて駅に向かっている。


初めてのデート、すっごく楽しかったな……。


色んな乗り物に乗って、たくさん緊張して、叫びまくって。

あたしが作ったお弁当も、喜んで一緒に食べてくれて。

朝から遊んだのに、全然時間が足りないくらいだった。


雪平くんも、あたしと同じかな……?


チラッと隣を見ると、ん? と雪平くんが見返してきた。


「……今日はありがとう」

「ううん。璃子ちゃんこそ、俺に時間をくれてありがとう」


……きゅぅぅん。

溢れんばかりの幸せを全身で噛み締める。

大好きな人と、こうやって一緒の時間を過ごしたら、こんな気持ちになるんだ。


「……っ」


ぴと、と手に何かが触れて、そのまま吸いつくように絡み合った。

あったかい……。


その時鞄の中でまたブブッとスマホのバイブレーションが鳴った気がしたけれど、あたしは気にしなかった。

だって、この時を大事にしたかったから。

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