子犬系男子は待てを知らない


「でね、健太郎のやつがさ」


雪平くんとのデート翌日。

日曜日ということもあり、いつもより賑わう喫茶店に、不満混じりの声が響いた。

発信源は、愛花だ。


「最近ゲームばっかで私の扱い雑だから、ムカつく」


なんて文句タラタラに言ってるけど、

あたしには、また惚気けてんな〜、としか思えない。


「はいはい」


あたしは愛花曰く今SNSでプチバズり中という、この店人気NO.1のパンケーキを口に放り込んで、延々と続く愚痴に相槌を打つ。


小柄で可愛らしい見た目とは裏腹に、サバサバしてて、一見クールに見られがちな愛花だけど。

本当は寂しがり屋で情に厚いって、あたしは知ってるんだ。


それに──。


「璃子、なににやけてんの?」

「にやけてません〜」


怒ってるみたいだけど、それだけ笠井くんに構ってほしいってことでしょ?

そう考えたら、可愛くてしかたないんだもん。


そんな怒らないでよと、あたしは愛花ご自慢のジト目に笑いかける。

すると愛花は「怒ってはないから」と照れ隠しをするようにふい、とむこうへ向いた。

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