子犬系男子は待てを知らない
「てかそうだ」
怒るといえば……思い出したのだ。
「愛花。旭に昨日のこと教えたでしょ?」
昨日、雪平くんとのデートを邪魔したメッセージ。
愛花と山岡くんには、あたしと雪平くんがテーマパークに行くことを事前に伝えてたから、知ってるのは当たり前として。
教えてない旭がそのことを知ってるなんて、あまりにもおかしすぎる。
まさか山岡くんが旭にそんな話をするとは思えないし……。
じーっと疑いの目で見ていると、ほどなくして
「あー」
と、バツの悪そうな音が耳に届いた。
「うっかり口から滑り落ちたような、落ちてないような」
ほーう、やっぱり犯人は愛花だったのね。
苦笑いの愛花に、あたしは「もう」とため息のような声で眉を寄せる。
そうやって責めながらも、
あたしってば、名探偵?
なんて鼻高々になってしまう自分がちょっと怖いけど。
……でもそっか。
旭、あたしと雪平くんが付き合ってること知ってるってことか。
改めて考えると、なんだかちょっと恥ずかしいかも。
あたしはじわじわと滲み出る気まずさを払うように、持っていた紅茶のティースプーンをくるりと一周させた。