子犬系男子は待てを知らない
「ねえ、ここどう?」
あたしはネットで見つけたばかりのお店を愛花に見せる。
なにやら新設のカフェみたい。
星がたくさんついてるから評判もよさそうだし、と付け足したその時だった。
どこからか騒がしい声がして、スマホから視線を逸らす。
嫌な予感がする。
小さくて聞こえにくいけど、男女の声?
なんか喧嘩でもしてるみたいな……。
「やっ、離してよ!」
「だから話を……」
え、待って? あれって……。
だんだん大きくなる声と共にこっちに近づいてきたその人は、あたしのよく知っている人に見えて──。
「ちょっとあんた! この子嫌がってんでしょ? 離しなさいよ」
「藍原さん……!」
あたしは〝桃園さん〟の腕を掴んでいるその人の腕を引き剥がそうと、渾身の力で引っ張った。