子犬系男子は待てを知らない






『はぁ……』


よく晴れた朝。

清々しいはずの空気が、あたしにはなんだか重苦しかった。



【おつかれ! 急だけど会えたりする?】


前の日に〝元カレの遥斗〟から届いた、LINEのメッセージが元凶だ。


遥斗は紛れもない、あたしが恋を諦めてしまっていたそのきっかけの人。

この前勉強会の帰り道にばったり会ったっきり何の音沙汰もなかったし、もう連絡をとることなんてないと思ってたのに。


……いったい、どういう風の吹き回しだろう。

わからなかったけど、訊くとどうやらあたしに謝りたいといった感じだった。


でも当然、あたしは会う気もないし別に謝ってほしくもないから断った。

彼氏もいるからって。


それなのに。


『あ〜、どうしよ』


寝起きの髪をぐしゃりとする。


馬鹿なあたしはうっかり【わかった】と、そう返事してしまったんだ。


断わるあたしに折れてくれないどころか、〝お願い〟の一点張りだった遥斗。

何度も何度もやり取りをするうちに、脳がおかしくなったんだと思う。


『もう、最悪すぎぃ……』


学校についても尚、その憂いは晴れなかった。


それから、このことが雪平くんにバレるのは時間の問題だった。

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