子犬系男子は待てを知らない


『何かあった?』


なんて、いつもと様子が違うあたしを心配してくれた雪平くん。

あたしは、そんな彼に嘘をつきたくなくて全部のことを話した。


遥斗と……元カレと今度会うことになってしまったと。


『やっぱり、今からでも断った方がいいよね』


こんなの良くない気がする。

そう思い直して言うと、雪平くんは真剣な目をしてこう返したんだ。


『それ、俺もついて行っていい?』


……え。

いいの? そんなこと。

困惑して答えが出せないでいると、雪平くんがあたしに近づき、そっと包み込むように肩に手を置いた。


『璃子ちゃんはさ……その人と昔、何かあったんだよね』

『……うん』

『今でもそのこと……』


窺うような優しい声。

前にあたしが話したこと、その時感情が抑えられなくなってしまったこと、きっと雪平くんは覚えてくれてたんだろう。


一瞬躊躇ったけれど、あたしは素直にこくりと頷いた。


雪平くんと出会って、恋をすることは怖くないんだってことを知った。

むしろこんなにも素敵な気持ちになれるんだって、特別な想いを教えてもらった。


だけどまだ、全ての呪縛が解かれたわけではなかったから。


『もしその人と少しでも話してみたいって思ってるんだったら、そうしてみてもいいんじゃないかな』


そんな提案に、あたしの首は自然と縦に動いていた。


『大丈夫。俺がついてるから』

『うん……』

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