子犬系男子は待てを知らない


……もしかして、遥斗との会話を聞かれてたのかな。

いや。

でも雪平くん、今戻ろうとしてたって言ってたし……。


お母さんのこと?

……それも多分違う。

ついこの前、手術が成功したって嬉しそうな顔で教えてくれたばかり。


じゃあ、あたしが何かしちゃったってこと?

わからない。


……ううん。


これはきっとあたしのせい。

初めから、遥斗になんか会わなかったらよかったんだ。

優しい雪平くんだからって甘えてた。


でも、彼女が元カレと会うなんて、そんなのやっぱりいい気しないよね。


「ごめんね……」


あたしは、小さくなっていくその後ろ姿に、そう呟くことしかできなかった。

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