子犬系男子は待てを知らない
🍓雨降りは予測できない






こんなにもこの門をくぐるのに緊張したのは、入学して以来初めてだった。


重りを巻いたみたいに重くなった足。

それを何とか動かし、靴箱まで辿り着いたあたしは、すぐさまとある名前を探した。


「……」


まだ来てない、か。

中身が上靴のままであることを確認するも、まだそわそわとしてしまう。


──というのも。

昨日のことがまだずっと、頭から、心から消えないでいるから。


低く抑揚のない声に、半分ほどしか光の宿っていない瞳。

あんな雪平くん……初めてだった。

無理してるみたいな、何かを隠してるみたいな。

そんな様子がまだ鮮明に焼き付いてる。


気のせい、だったらいいんだけどな……。


そうして落ち着かない心のまま、あたしは教室の前までやってきた。

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