子犬系男子は待てを知らない
不意にかけられた声に促されるように振り向くと、ビリッと全身に電流が走った。
雪平くん……!
「お、おはよ」
「おはよ」
ちょうどドアから入ってきた彼。
目が合った瞬間咄嗟に挨拶したあたしに、雪平くんはすぐ同じように返してくれた……んだけど。
どうしよう。焦って次の言葉が出てこない。
「あ、あの──」
「雪平ー!」
何か言わなきゃと口を動かしたのと同時、突如響いた声に遮られ、あたしの言葉はそれ以上続かなかった。
「ちょうどいいとこに! 数学教えてー」
「うん、わかった。ちょっと待ってて!」
雪平くんはそう声を飛ばしたかと思うと、「じゃあね」と小さく言い残しすぐにそっちへ行ってしまった。
……話したかったのに。
男子たちに囲まれているその姿を見て、複雑な気持ちになる。