子犬系男子は待てを知らない
「それが、関口さんに今日は急用があって一緒に帰れないから、璃子ちゃんのこと任せたって言われて……」
「は?」
急いで教室中を見回す。
いた!
あたしは後ろのドアからにやにやとこっちを見ていた〝関口さん〟に、どういうこと? と目で訴えた。
すると、
(ふぁ、い、と!)
そう口パクで答えたその人は、憎たらしいほど上手なウインクを決めて去っていった。
愛花め……!
あたしと雪平くんを意地でも二人きりにするつもりね?
ほんっとこの人だけは……と呆れていると。
「ということで、璃子ちゃんをお迎えに来ました」
「っ!」
雪平くんがひょこっとあたしの前に爽やかな笑顔を覗かせた。
「え……でも雪平くん、これから部活なんじゃ」
あたしと愛花は帰宅部だけど、雪平くんは剣道部のはずよね?