子犬系男子は待てを知らない


「避けてないよ」


あたしの声が響いてすぐ、そんな言葉が返された。


避けてない。

雪平くんはそう言ったけど、

こんなにもチャレンジしてなかなか二人きりになれないなんて、そうとしか思えない。

きっと、気を使ってくれてるだけで……。


「ごめん」


迷わず頭を下げた。


「昨日のことなんだけど、あたし無神経だったよね。元カレと会うなんて……。雪平くんの気持ち全然考えてなくて、ごめんなさい」

「やめて璃子ちゃん。添田さんと会ってみたらって言ったの俺でしょ? 別にそんなの気にしてないから」

「……本当に?」


顔を上げると、にっこりと笑みを浮かべた雪平くんがいた。

だけど……。


じゃあどうしてそんな笑い方するの?


少し淋しげで、どこか苦しそうな……。

心の底から笑ってないってことくらい、わかるよ。

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