子犬系男子は待てを知らない
「じゃあね、頑張んのよ」
「うん、ありがと」
そうよね。
いつまでもくよくよしてたって、そんなのあたしらしくない。
雪平くんが気のせいだって言ったんだから、気のせいなのよ。
うん。
「よっし」
切り替えたあたしは、雪平くんの姿を捜した。
「……あれ?」
いつの間にか教室からいなくなってる。
でもまだ机に鞄があるから帰ったわけではなさそうだけど……。
「あっ、雪平くん」
その時、どこからか帰ってきた彼を見つけて声が出た。
「あのっ」
「ごめん、璃子ちゃん。先帰ってて?」
「……え?」
申し訳なさそうに言った雪平くんの声に、あたしは言葉を失った。
なんで──。