子犬系男子は待てを知らない
「悪ぃ藍原ー、彼氏暫く借りることになるわ。期末マジやばくってさ〜」
「テスト前まで放課後に勉強教える約束したんだ」
「そ、そっか」
なんだ、そういうことか。
「じゃあまたね」
あたしは雪平くんと津川くんに手を振ると、駆けるように教室を出ていった。
さっきから心がざわざわと音を立ててる。
優しくて頭のいい雪平くんが友達に勉強を教えるなんて、普通のこと。
なんでもないことのはずなのに。
……なんでこんな悲しい気持ちになるんだろ。
──それから数日が経っても、なんとなく感じる雪平くんとの距離は変わらなかった。
愛花も心配してくれてるけど、どうしていいかわからなくて。
そのままほとんど挨拶を交わすだけの日々が続いていき、
気づけば明日でテスト一週間前という日を迎えてしまった。