子犬系男子は待てを知らない


「悪ぃ藍原ー、彼氏暫く借りることになるわ。期末マジやばくってさ〜」

「テスト前まで放課後に勉強教える約束したんだ」

「そ、そっか」


なんだ、そういうことか。


「じゃあまたね」


あたしは雪平くんと津川くんに手を振ると、駆けるように教室を出ていった。


さっきから心がざわざわと音を立ててる。

優しくて頭のいい雪平くんが友達に勉強を教えるなんて、普通のこと。

なんでもないことのはずなのに。


……なんでこんな悲しい気持ちになるんだろ。




──それから数日が経っても、なんとなく感じる雪平くんとの距離は変わらなかった。


愛花も心配してくれてるけど、どうしていいかわからなくて。

そのままほとんど挨拶を交わすだけの日々が続いていき、

気づけば明日でテスト一週間前という日を迎えてしまった。

< 284 / 352 >

この作品をシェア

pagetop