子犬系男子は待てを知らない


「じゃないと張り合えないじゃん?」


そんな一言は余計だけど。


「じゃーな、旭くん応援してるから。仲直り頑張れよー」


お得意のあざとさ120%スマイルは、今のあたしの心にはじーんと沁みて仕方がなかった。


「ありがと!」


友達の群れに混じっていく旭を見送り、再び歩き始める。


旭の言う通り、あたしがこんなんじゃ雪平くんと向き合えないままだ。

明日の朝会ったら、ちゃんと話をしよう。

今度こそは何がなんでも。絶対に。


そうやって決心し暫く歩みを進めていると、ポタッと冷たい感覚があたしの頬に触れた。

それは次第に、数を増やして。


「雨……?」


うそでしょ!?

天気予報見忘れた日に限って、こんなこと……。

当然傘は持ってきてないし、折りたたみもない。

というのに、広がる景色は果てしなくどんよりとしている。


「……どうしよ」


とはいえ、まだ小雨っぽいし。


──走ればなんとかなる?


そう考えたのが、運のつきだった。

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