子犬系男子は待てを知らない


「璃子ちゃんはもっと、俺のこと怒っていいんだよ」


……え?

それは、意外な一言だった。


「怒ることなんて、なにもないよ。雪平くんは、いつも優しいし」


怒られなきゃならないのはあたしの方だ。

無意識にも、雪平くんのことを傷つけてしまったんだから。


「……優しい、か」


あたしが返すと、ポツリと呟き、空を仰ぐように天井を見た雪平くん。


そのまま何か言いたげな表情で、「全然そんなことないのに」と宙に落とした。


「璃子ちゃんは、添田さんと会ったことを気にしてるよね」

「うん」


だって、それしか雪平くんの様子がおかしくなる理由が思い当たらない。

そう思いながら首を縦に振ると、真剣な声が続いた。


「でも会ってみたらって言ったのは俺の方だし、その理由だってちゃんとあるから、それは本当に気にしないでほしいの」

「じゃあ、なんで……」

「これは、全部俺の問題だから」

「雪平くんの、問題?」

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