子犬系男子は待てを知らない


「〝名前〟だったりする?」


言い終えた途端に、その顔は一気に紅潮していった。

ビンゴだ。


「知っててあえてそうしてたの?」

「や、そういうわけじゃ」

「でも璃子ちゃん、さっきからずっと笑ってる」

「それは、雪平くんが可愛いから──」


……ってあれ。

あたし、余計なこと言っちゃった?


「ふーん、さっきから可愛い可愛いって。そうやって俺のこと面白がってるんだね?」


じろり、鋭い眼差しが突き刺さる。


さっきまでの子犬雪平くんはどこへやら。

どうやら、しばらく戻ってきてくれそうにはない。


「病人だからって思ってたんだけど。俺もう知らないよ?」


──え、と思った瞬間に倒された身体。


気づけばあたしの頭は雪平くんの膝の上にいて。


……これは、いわゆる〝膝枕〟と言うやつなのでは。

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