子犬系男子は待てを知らない


ひゃーーーだめっ、耐えられない。

とてつもないむず痒さに襲われ、瞬時に両手で顔を覆った。


なんなのこれ。

名前呼ぶのがこんなに恥ずかしいなんて。


「こ、これでいい?」

「……」

「ねえちょっと、聞いてる?」


返事がなくて焦ったあたしは、指の隙間からおそるおそる覗いてみる。

すると、そこには同じように顔を隠した彼がいて。


「……え?」

「ごめん、思ったより破壊力やばくて」


それはこっちのセリフだからー!

初めて見る雪平くんのオンパレードに、さっきからドキドキが止まらないんだもの。


「好きな子から名前呼ばれるの、やっぱいいね」

「……あたしも、雪平くんに名前呼んでもらうの好きだよ」

「それは嬉しい話だけど……もう戻っちゃってる」

「あっ」

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